空港で大きな旅客機を見たことがありますか?
巨大な機体。
たくさんの乗客。
大量の荷物。
そして燃料。
全部合わせると、とても重くなります。
そんな巨大な飛行機が滑走路を走り始めると……
ゴォォォー!
しばらくして、
巨大な機体が地面から離れます。
そして、そのまま空へ。
ここで素朴な疑問です。
あんなに重い飛行機が、なぜ落ちないのでしょうか?
大きな風船のように軽いわけでもありません。
鳥のように翼をパタパタ動かしているわけでもありません。
それなのに、
数百人を乗せた巨大な旅客機まで空を飛ぶことができます。
その秘密を握っているのが、
「翼」と「空気」です。

今日は難しい数式を使わずに、
飛行機が飛ぶ仕組み
を身近な例から見ていきましょう。
飛行機には4つの力が働いている
飛行機が空を飛んでいるとき、
大きく分けると4つの力が関係しています。
① 重力
飛行機を地面の方向へ引っ張る力です。
② 揚力
飛行機を上方向へ支える力です。
③ 推力
エンジンなどによって飛行機を前へ進ませる力です。
④ 抗力
空気によって飛行機の前進を妨げる力です。
飛行機が空を飛ぶためには、
これらの力のバランスが重要になります。
でも、ここで新しい疑問が出てきます。
そもそも「揚力」は、どこから生まれるのでしょうか?
車の窓から手を出した経験はありますか?
※実際の走行中に手を窓から出すのは危険なので行わないでください。
ここではイメージだけしてみましょう。
前から強い風が来ているとします。
手のひらを水平にすると、
風を比較的まっすぐ受けます。
では手のひらを少し傾けたら?
風を受けた手に、
上へ押されるような力
を感じることがあります。
飛行機の翼はもちろん人間の手とは大きく違いますが、
このイメージは、
「空気の流れと翼の角度が力を生む」
ことを理解する入口になります。
飛行機が前へ進むと、
翼の周りを空気が流れます。
その空気と翼の相互作用によって、
飛行機を上方向へ支える力が生まれます。
翼は空気を下へ向けている
飛行機の翼を横から見ると、
ただの平らな板ではありません。
翼には形があり、
さらに空気の流れに対して一定の角度を持っています。
この角度を考えるとき重要になるのが、
迎角(むかえかく)
です。
翼が空気の中を進むと、
翼の周囲の空気の流れが変化します。
翼は空気を下方向へ曲げるように働きます。
すると反対に、
翼には上向きの力が働きます。
これは、
作用と反作用
という考え方でも見ることができます。
翼が空気に力を与える。
すると空気も翼に力を返す。
その上向き成分が、揚力に関係しているのです。

つまり飛行機は、
何もない空中に浮かんでいるわけではありません。
周囲の空気と絶えず力をやり取りしながら飛んでいる
のです。
「翼の上を通る空気が速いから飛ぶ」は間違い?
飛行機の説明で、
こんな話を聞いたことがあるかもしれません。
「翼の上側は曲がっている」
↓
「上を通る空気は速くなる」
↓
「圧力が下がる」
↓
「だから飛行機が上へ持ち上がる」
これは揚力を理解するうえで関係する部分があります。
翼の周囲では実際に圧力の違いが生じ、
翼の上側の低い圧力と下側の圧力の違いが揚力に大きく関係します。
しかし、
「翼の上下に分かれた空気が、後ろで同時に合流しなければならない」
という説明は正しくありません。
翼の上側を流れる空気が、下側より先に後方へ到達することもあります。
飛行機の揚力は、
翼の形だけを一つ見れば説明できるものではありません。
翼の形、迎角、速度、空気の流れ、圧力分布
などをまとめて考える必要があります。
だったら平らな翼では飛べない?
ここで面白い疑問です。
もし、
「上側が丸い翼だから飛べる」
だけなら、
平らに近い翼では飛べないのでしょうか?
実際には、
適切な迎角と空気の流れがあれば、
平板でも揚力を発生させることができます。
また、背面飛行が可能な航空機もあります。
これは、
翼の上側が丸いから飛べる
という説明だけでは不十分であることを示しています。
大切なのは、
翼が空気の流れにどのように影響し、
その結果としてどのような圧力や力が生まれるかです。
離陸するとき、なぜあんなに速く走るの?
空港で飛行機を見ていると、
離陸前に滑走路をかなり速く走ります。
なぜ最初から、
ゆっくり空へ上がらないのでしょう?
重要なのが、
翼と空気の相対的な速さ
です。
飛行機が速く前進すると、
翼の周囲を流れる空気との相対速度が大きくなります。
すると条件が整えば、
より大きな揚力を得られるようになります。
だから飛行機は滑走路で速度を上げ、
必要な揚力を得られる状態になってから離陸します。

空港で見るあの長い加速には、
ちゃんと理由があるのです。
エンジンが飛行機を上へ持ち上げている?
ここも誤解されやすいポイントです。
ジェットエンジンから強力な噴射が出ています。
だから、
「エンジンが飛行機を直接上へ押し上げている」
と思う人もいるかもしれません。
一般的な旅客機では、
エンジンの大きな役割は推力を生み出して機体を前へ進ませることです。
飛行機が前進する。
↓
翼の周囲に空気の流れが生まれる。
↓
翼が揚力を発生させる。
この組み合わせによって飛行します。
つまり、
エンジンと翼は役割が違う
のです。
もちろん航空機の種類によって仕組みは異なりますが、
一般的な旅客機を理解するなら、
エンジン=前へ進むための推力
翼=主に揚力を生み出す
と考えるとわかりやすいでしょう。
離陸前に翼の形が変わっている?
飛行機に乗ったとき、
窓から翼を見てみてください。
離陸前になると、
翼の一部が動いて形が変わることがあります。
代表的なのが、
フラップ
です。
フラップを展開すると、
翼の形状などが変化し、
比較的低い速度でも必要な揚力を得やすくなります。
着陸するときにも使われます。

つまり飛行機の翼は、
ただ固定された板ではありません。
状況に合わせて、
飛びやすい形へ変化する仕組み
も持っているのです。
迎角を大きくすれば、ずっと上へ行ける?
ここまで読むと、
こんなことを思うかもしれません。
「翼をもっと傾ければ、揚力がもっと増えるのでは?」
ある範囲までは、
迎角を大きくすることで揚力係数が増加します。
しかし、
大きくすればするほど良いわけではありません。
迎角が大きくなりすぎると、
翼の表面に沿っていた空気の流れが大きく剥がれ、
揚力が大幅に減少することがあります。
これが、
失速
です。
「失速」という言葉から、
エンジンが止まることだと思う人もいますが、
航空力学でいう失速は基本的に、
翼の迎角が大きくなりすぎ、流れが剥離して揚力が大きく低下する現象
を指します。
だからパイロットは、
速度だけでなく迎角などにも注意して飛行しています。
飛行機は重いのに、なぜ落ちない?
最初の疑問に戻りましょう。
巨大な旅客機には、
地球の重力が働いています。
当然、
下へ引っ張られています。
しかし翼が空気との相互作用によって十分な揚力を生み出せば、
その重さを支えることができます。
水平飛行に近い状態では、
大まかに考えると、
下向きの重力
と
上向きの揚力
がバランスしています。
同じように、
前へ進ませる推力と、
進行を妨げる抗力も関係しています。
飛行機は、
「重力がなくなったから飛んでいる」のではありません。
重力はずっと存在しています。
その重力に対抗できる力を、
翼と空気の相互作用によって生み出しているのです。
紙を使って「翼」を感じてみよう
危険な実験をする必要はありません。
薄い紙を一枚用意します。
紙の端を持って、
紙の上側に沿うように息を吹いてみると、
紙が動く様子を観察できます。
ただし、
この簡単な実験だけで飛行機の翼に働く揚力のすべてを説明できるわけではありません。
重要なのは、
流れる空気によって圧力や力が変化する
という感覚を身近に観察することです。
飛行機の翼では、
これよりはるかに複雑な空気の流れが起きています。
【1分チャレンジ】
ここで問題です。
一般的な旅客機が飛ぶとき、
翼の主な役割はどれでしょう?
① 飛行機を前へ押す
② 揚力を生み出して機体を支える
③ 重力そのものを消す
答えは……
② 揚力を生み出して機体を支える
です。
エンジンは主に推力を生み出し、
飛行機を前へ進ませます。
そして前進する翼の周囲を空気が流れ、
圧力分布や空気の流れの変化によって揚力が生まれます。
30秒で復習
今日覚えてほしいことは5つです。
① 飛行機には揚力・重力・推力・抗力が働いている。
② 翼と空気の相互作用によって揚力が生まれる。
③ 翼の形だけでなく、迎角や速度も重要。
④ エンジンは主に飛行機を前へ進ませる推力を生み出す。
⑤ 迎角が大きすぎると失速することがある。
空港で見ていると、
巨大な飛行機が軽々と浮かんでいるように見えます。
でも実際には、
翼の周りで大量の空気が動き、
圧力が変化し、
さまざまな力が釣り合っています。
次に飛行機に乗るときは、
窓の外の翼を見てみてください。
あの翼の周りでは、
目には見えない空気が、
巨大な飛行機を支える仕事をしている
のです。
次回予告
冷蔵庫はなぜ中だけ冷たい?実は「冷気を作っている」わけではない?
冷蔵庫を開けると、
ヒヤッ!
真夏でも中は冷たいですよね。
では冷蔵庫は、
どこから「冷たさ」を作っているのでしょう?
実は……
冷蔵庫は「冷たさ」を作る機械というより、熱を移動させる機械
と考えると仕組みが見えてきます。
しかも、
冷蔵庫の後ろを触ると暖かいことがあります。
中は冷たいのに、
なぜ外は暖かくなるのでしょうか?
25편에서는、
冷蔵庫 × 熱 × 身近な科学
を見ていきます。
