映画では、悲しい人の頬を涙がスーッと流れ落ちます。
では、もし宇宙飛行士が宇宙で泣いたらどうなるのでしょうか?
涙は頬を流れる?
空中に飛んでいく?
それとも、目の中に残る?
実は――
地球のようには下へ流れません。
涙は目の周りにたまり、まとまった液体として残りやすくなります。

なぜ、こんな不思議なことが起こるのでしょう?
答えは、
「重力」と「表面張力」
にあります。
地球では、なぜ涙が頬を流れる?
まず地球で考えてみましょう。
悲しいとき。
感動したとき。
目にゴミが入ったとき。
涙が増えると、目の周りからあふれて頬へ流れることがあります。
これは地球では重力が液体を下方向へ動かすためです。
私たちは毎日重力の中で生活しているので、
「水は下へ落ちる」
ことを当たり前だと思っています。
コップから水をこぼせば床へ落ちます。
シャワーの水も下へ落ちます。
雨も空から地面へ落ちてきます。
でも宇宙では、状況が変わります。
宇宙では「下」がない?
国際宇宙ステーションのような軌道上の環境では、宇宙飛行士や周囲の物体は継続的な自由落下状態にあり、微小重力と呼ばれる状態を体験します。
そのため、地上のように液体が「下へ落ちていく」ようには見えません。
では、水はどうなるのでしょう?
液体では表面張力の影響が目立つようになります。
表面張力とは、簡単に言えば、
水ができるだけまとまろうとする性質
です。
そのため宇宙空間の微小重力環境では、水滴が丸い形になって浮いているように見えることがあります。

まるで透明なビー玉のようです。
地球ではすぐ下へ落ちてしまう水が、宇宙ではまったく違う姿を見せるのです。
では、宇宙飛行士が泣いたら?
ここで最初の質問に戻ります。
宇宙飛行士が涙を流したらどうなるのでしょう?
涙は地球のように、
目 → 頬 → あご
と流れ落ちにくくなります。
その代わり、涙は目や皮膚の周辺にまとまりやすくなります。
涙が増えると、目の周りに液体がたまって不快に感じることもあります。
つまり宇宙では、
「涙は流れ落ちる」というより、目の周りにまとわりつく
と考えるとイメージしやすいでしょう。
コップの水はどうやって飲む?
すると、こんな疑問も出てきます。
宇宙で普通のコップに水を入れたら、
どうやって飲むのでしょう?
地球ならコップを傾ければ、水は口の方向へ流れてきます。
しかし微小重力では同じ方法が使いにくくなります。
そのため宇宙では、飲み物は通常、専用の容器やストローなどを使って飲みます。

液体が機器の周囲に漂えば、扱いが面倒になる可能性もあります。
宇宙では、
「水を飲む」
という地球では何でもない行動にも工夫が必要なのです。
雨が降ったらどうなる?
ここで想像ゲームです。
もし宇宙ステーションの中に、小さな雨雲を作れたらどうなるでしょう?
地球の雨のように、
上から下へザーッ!
とは降らないでしょう。
微小重力環境では、小さな水滴がさまざまな場所に漂い、壁や物体、人の体などに付着する可能性があります。
「雨」というより、
水滴が部屋の中を漂う不思議な世界
を想像したほうが近いでしょう。
宇宙では汗も大変?
涙だけではありません。
宇宙飛行士が運動して汗をかくと、地上と同じように汗が下へ流れ落ちるとは限りません。
汗が皮膚の表面にまとまりやすいため、タオルで拭き取ることも重要になります。
つまり、
涙。
水。
汗。
どれも同じ液体ですが、
重力の感じ方が変わるだけで、私たちが知っている動きとはかなり違って見える
のです。
【1分チャレンジ】
ここで問題です。
宇宙ステーションのような微小重力環境で、大きな水滴を空中に作ったとします。
その水滴はどうなりやすいでしょう?
① 地球と同じように床へ落ちる
② まとまりながら丸い形になりやすい
③ すぐに煙のように消える
あなたならどれを選びますか?
答えは……
② まとまりながら丸い形になりやすい
です。
表面張力の影響によって、水滴は球に近い形を作りやすくなります。
地球では見えにくい力が見えてくる
宇宙が面白いのは、
地球では当たり前すぎて気づかない現象を、まったく違う角度から見られることです。
地球では水を見れば、
「下へ落ちるもの」
と思います。
しかし微小重力環境では、
水自身がまとまろうとする性質
がとても分かりやすく見えてきます。
つまり宇宙は、
遠い星を見る場所であるだけではありません。
地球の身近な科学を理解するための巨大な実験室
でもあるのです。
30秒で復習
今日覚えるポイントは3つです。
① 宇宙ステーションでは微小重力状態を体験する。
② 涙は地球のように頬を流れ落ちにくく、目の周りにたまりやすい。
③ 水滴は表面張力によって丸くまとまりやすい。
次に水滴を見たら、
こんな想像をしてみてください。
「もし重力の影響がほとんどなかったら、この水はどんな形になる?」
身近な一滴の水からでも、宇宙の科学は始まります。
次回・19편
100万円を年5%で運用したら、20年後はいくら?「複利」の意外な力
次は再び数学。
でも難しい公式ではなく、お金 × 数学で考えてみましょう。
